船舶管理から船員確保まで皆様のニーズにお答え致します

Blog/2017-06-06

Top / Blog / 2017-06-06

賽銭箱の祟り

学校から帰ると家には誰も居ない。
6月頃になれば、農家は夏に向けた野菜の植え付けなどの、野良仕事が忙しいのである。
カバンを投げ出した私は一人で近くの鎮守様へトボトボと向かう。
100段を数える石段をトントンと一人で登っていく。 
階段の両側にはうっそうと生い茂った、巨大な老松が高くそびえている。

この神社は昼間でも一人では少し寂しい森である。
私はお宮さんの上がり口にある賽銭箱の周りを良く見回る。
時々5円銅貨が落ちていたりして、とんでもない授かりものをすることがあったからである。
私の家はこのお宮さんのすぐ下側に建っていて、いつも私の独占的な遊び場になっており
お賽銭の落ちこぼれは何となく私の利権のような気がしていた。
しかし、その日は何にも落ちていなかった。

とぼとぼとそのままお宮さんを行き過ぎて、裏側を通り抜けて進めば
森からいきなり視界が開けて、海の見える崖に出る。
その崖淵の細い農道を下っていくと、少し平地があり、お祖母さんの梅畑があった。
その頃は、おやつなんてものは無い時代だから、小学校5年生くらいに成長すれば
いつも芋腹では腹が空いてどうにもならなかった。

丁度、時節は梅の実の熟れるころであった。
何にも食べるものが無ければ、落ちた黄色い梅を拾い、おやつに食べることにした。
黄色く熟した落ち梅を、口に持っていけば何処にも無いような
上品な梅の香りが口の中に広がる。
思ったより甘くて美味しい。
私は夢中で何個も食べてポケットにも入れた。

来た道を一人で帰りながら、また梅を口に入れた。
やがて、晩御飯の時間になると、丸いテーブルに姉たちと一緒に囲むように座る。
姉ちゃんに今日のことを其々が報告するのだが、私は何も話すことが出来ない。
どうやら食欲も無くなって、おなかがシクシクと痛みはじめた。

「 姉ちゃん、腹が痛い! 」
3人の顔が私に集中した。
長女が棘(トゲ)のある声で「お前はどうせ又何かを拾って食べたんじゃろぅ。」
「 あ~ぁ嫌じゃ嫌じゃ・イヤシン坊じゃね~馬鹿・・ 」
拾いもしない八幡さんの賽銭箱の罰があたったのか
その晩は万能の「正露丸」も利かないばかりか、夜通しトイレに走り、狂い泣きをした。

梅を拾って食べた弟を見下げる姉達は、何処にも同情の欠片すら無かった。
代わりに「 馬鹿 」と言う言葉と「情けない」・・・
恨み節だけがダブルパンチで心に残った。
貧乏でもどこかにユーモラスの残る少年期は、生きるという失敗のページを
毎日毎日めくって過ぎて行った。
梅の色づく頃になると、この苦い思い出がいつも頭に浮かぶ私・・・。



a:93 t:1 y:0



コメント


認証コード(3758)

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional