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Blog/2017-11-16

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安泰を祈る

私の幼いころは、日本全体が終戦の痛手に失った物が多く
貧しすぎる鍋底景気が続いていた。
国民の多くは何とか食べていければ良いと思う時代であった。
そんな社会情勢で、父は戦死して帰らず、母は事故で一命を落としたわけだから
5人の兄弟がどのように貧しい生活で育ったものか、想像だけでも推して知るべしであった。

毎日毎日、丸いちゃぶ台の上に乗るのは、ジャガイモだけの日が続く。
それ以外には何もないわけだから、我儘を言うことも決まっていた。
「 また今日もジャガイモ?・・・ 」
「 気に入らなければ食べなければいいよ。これしかないから。 」
と姉がピシャリと釘をさす。
勿論、空腹で死ぬわけにはいかない。
生きるために、お茶でジャガイモを胃の中に流し込んでいた。

あの頃はテーブルに食べ物がのっているだけでも、それは有り難い事であった。
そして、幾十年が過ぎていった。 
どのように反省しても、恵まれた生活になれた今は
大切なものをすっかり忘れていることに気がつく。

過日の事、姉二人が島の墓参りの後に、三原の我家を訪ねてくれた。
久しぶりの姉たちと夕餉を囲む団欒のひと時、語らずとも自然と昔の苦労話に花が咲いた。
その時の姉達から聞く「 安夫 」と言う名前の由来に、私は飛び上がるほどに驚いた。
今までは親の心も知らずに、母親が無学なために安易につけた名前くらいにしか
思っていなかった。

「 安っぽいと思われた・安夫 」という名前には、実は母の切実な祈りがこもっていた。
自分の心の未熟さに唖然とさせられたのである。
「 貴方の名前はね~、お父さんが2回目の徴集で戦争に駆り出された後に生まれたので
  お母さんはお父さんが戦火を逃れて、どうぞ「安泰」に帰ってこられますようにと
  深い祈りを込めた「安」「夫の安泰を祈る」名前とつけたのよ。
  私はお母さんがお父さんにその願いを込めて「安夫」と付けましたと
  手紙を書いたことを聞きました。」

「・・・・・」

私には言葉が無かった。
父親への無事な帰還を願う男の児が、私の名前であったのだ。
父の戦死で母の願いを叶えることもできなかった名前の由来に
私は思わず目頭があつくなった。

姉たちが我家を訪ねてくれた夕餉は、湯気の立つ、鍋料理だった。
鍋の中には、鱈の身・鶏肉・椎茸・えのき・ねぎに白菜
魚のすり身団子・豆腐が煮立って、茶の間には何とも食欲をそそる香りが華やいでいた。
私はいつの間にいただきます、と両手を合わせる感謝の気持ちがあふれて来た。
いきなり「 うまそう~ 」といいながら鍋の湯気に涙をごまかした。
「 味が薄い 」だの「 何でホタテが入らないの 」「 だし昆布はどこだ 」
などと胡麻化しながら振り返れば、感謝を忘れた自分がそこにいた。
人は贅沢に慣れるごとに、感謝が薄らぎ、同時に礼儀をも失っていくことに気づく。

人は誰でも、貧しかった原点を忘れてはならない。
親の気持ちを託した立派な名前「 安夫 」の由来を
母の優しさと思いながら私はこの名前に誇りをもって、これからは頑張りたいと思った。



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