船舶管理から船員確保まで皆様のニーズにお答え致します

Blog/2020-03-17

Top / Blog / 2020-03-17

人生は裸一貫から始まる

人はこの世に誕生する時は勿論「裸一貫」である。 
私が生まれた時代は不幸にも父は戦死し母までも事故で他界してしまったのだから
衣一枚だけを身にまとって大きくなったようなものであった。
中学校卒業しか学歴もなし、裸一貫で社会に投げ出されたと言っても決して過言ではなかった。

学校を卒業すると食い扶持減らしは華の都、大阪への就職列車に揺られていった。 
その当時、少年の胸のポケットにあったのは、帰ることのできない
大阪までの片道切符が一枚であった。 
餞別に頂いた小銭だけが、ポケットの中に冷たい手触りの感触で記憶に残っており
まだ見たこともない都会の生活は、期待より不安で胸が押し潰されるおもいであった。

電話のかけ方・電車の乗り方・挨拶の仕方・日常生活の全てが
島の生活とはかけ離れて、戸惑いは隠せなかった。 
馴染めない大都会の生活はどんな就職についても、空回りが続いた。 
紆余曲折、失敗を繰り返しては自信を喪失していった。 
何をしても務まらない三日坊主だと人に謗られて、何度田舎に逃げ帰った事であろう。
大阪には自分の住む場所はないと、少年は失望の果てにたどり着いたところが
意外にも船という職場であった。

田舎の同級生たちはやがて高校を卒業しようとする頃、勉強してきた彼らと比べて
私は自分が今まで何をしていたのだろうかと初めて振り返った。
「鉄工所・溶接工・クリーニング屋・洗濯機組み立て工場・運送屋・トラック助手」
様々な職業に就き、失敗と落胆を繰り返しながらその実
何の資格も何の独立した技術も持っていない道草に気付くことになった。

 
この頃、私という人間が初めて脱皮して、成人していくための
羞恥心が芽生え始めていた頃だと思う。
その点、船という職業は私には実に素晴らしい指針を与えてくれることに気づいた。 
今まで転々として働いた職業は、転職してしまえば全てが
また一から出直しであったはずが、船乗りという職業は会社を何度変わっても
乗船履歴という経歴を積み重ねることが財産になる。 
乗船履歴を足掛かりにすれば、丙種から始まる海技資格は
努力次第では甲種船長までよじ登ることが出来る。

つまり船乗りという職業は、自分個人の努力で国家資格を有し
資格に応じた生活を手に入れることができる職業だと気づいた。 
生きざまに目覚めた青年は、少しずつ周囲を豊かなものに出来る努力と
辛抱の方向性を確立していった。 
資格・昇進・貯蓄・車・やがて結婚・家・子供・そして沢山の物に囲まれて
いつしかそれが当たり前だと感じるように変わっていった。 
田舎には居場所が無くて故郷を後にした時は、何も持っていなかった一人の少年が
船乗りという職業に救われたのである。
 
今一度「 裸一貫 」の言葉を頭の中に思い描いてみる。 
欲しい物を手に入れた喜びはすぐに色あせてしまうけど
「 裸一貫 」健康な命がそこにある限り、人生は色あせることはない。 
あの時大阪で空腹に耐えて寂しい思いをしたからこそ
私の人生は磨かれて新しい価値を見つけることが出来た。
今日まで生きてこられた小さな幸せに感謝しながら
これからも前を向いて感謝の心であらねばと、振り返り思う今日この頃である。



a:136 t:1 y:0



コメント


認証コード(1816)

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional