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Blog/2020-05-14

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基本を忘れた便利さ

人生は何事も生きてみなければわからない。 
そして、航海も穏やかな港を出て、走ってみなければ、先の事はわからない。 
航海の安全を保障する者は乗組員そのものであり、航海の途中で船体に欠陥が生じて
沈没なんてアクシデントは、今の時代では考えられない。
良く見張りをして、先見の明を持って予測し、早い行動と正確な動作が求められる。

航海技術の第一義は、自らの船位を正確に測り知ることに尽きるものである。 
人間の持っている能力は、便利さの中に吸収され、本来の航海技術の基礎は
どんどん駄目になっていくように思える。 
一つの航海術を新旧で比較してみると、私の学んだ航海術は
その基本が船位測定の正確さと可否であった。
航海中に於ける船位が、テーブルの海図上に正確に出せるのか
その精度が責任当直条件の主要な一つである事は、今も昔変わらない。
 
勿論その当時では、「 GPS 」等と言う至極便利な船位測定機は無かったわけで
天測以外はもっぱら、「 交差方位法 」〔地文航法〕が、船位測定の常道であった。
顕著な岬と灯台を羅針盤で測定し、海図上に二本又は三本の方位線を引けば
その交差点が自船の船位である。 
最もシンプルで手軽な測定であったが、これを一般には1時間毎に繰り返して
コース線上に船を走らせるものであった。

今ではそんな必要も無くて、レーダーとGPS〔電波航法〕に頼れば
自船の位置もコースもナビゲーションの映像に正確に標示されているものである。 
しかしGPSの無い時代、私達は1回の当直毎に何度も海図上に目を通して
向かう先の水深、底質、近くの良港、暗礁とその名前などを
幅広く自然と覚えていったものである。

その当時、海図上に刻まれた時間ごとの船位こそ、その人の責任当直の証であった。
決して暇を持て余す余裕等のない、深い責任当直時間であったように思えた。
しかし今は苦も無く、映像に流れるライン上の船位を見ながら、当直は進んでいく。
かくも便利さは人を削減し、人の削減は経費を削減し
いつしか、人の心も見失っていくように思えてならない。 

過度の便利さは同時に人も育てず、丁寧に積み重ねるという我慢をも失わせる。
そして便利と言う方便の中に、無情と油断の落とし穴を作っているような気がしてならない。 
コツコツと手探りしながら学んだ航海術は、その精度を誇りとする航海士になり
立派な人間として育ていくのだと思う。
前へ前へ急ぎ足で進む便利さより、時には不便な時代を振り返る事も
基本を学ぶ意味で、とても大事なことではないだろうか。



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