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Blog/2020-10-20

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同じ釜の飯を食う

船乗り仲間に共通する言葉に「 同じ釜の飯を食う 」という諺がある。 
この言葉はまさに四面楚歌の海原に、苦楽・生死を分かち合う仲間同志
「一宿一飯の恩義」にもぴたりと符合する。
「 同じ釜の飯を食う 」とは、一緒に食事をとることでお互いの交わりを深め
仲間である意識と絆を確かなものにしていく、極めて重要な生活様式にあげられる。

私も船乗りの始まりは、この「飯炊き制度」から始まり
約2年間の年月「かしき制度」に鍛えられて来た思いが深い。 
後になって「飯炊き・かしき制度」に関わったことが
私の人間形成には非常に役立った事を疑う余地はない。 
今では皆さんの海上生活には程遠い条件になってしまった、一隻一人のコック長廃止について
安全運航への条件として少しふり返ってみようと思う。

「家族」とは「 食事を共にする者達 」と定義する考え方がある。
人間関係の基本「 共食卓 」が消えれば、家族制度は崩壊し人間性の喪失を招くとも言われる。 
ところが皆さんの船内における共同生活では、コック長制度を廃止したために
乗組員は出来るだけ( 一つしかない調理台 )調理時間が重ならないように
お互いを気遣って別々の時間に自らが炊事し、個々に食事を取る。
そうすることで必然的に共に食事をする機会は減少し
人間関係はさらに希薄化へと衰退するおそれがある。

同じく、家族が共に食事をとる時間をもたないために、家族のつながりは希薄化し
思いやりの乏しい生活様式は、やがて大きな悲劇を生みやすい方向へ推移しやすい。  
現代の家庭で、日々家族と一緒に食事をとることができている中学生は
何と7パーセントに過ぎないというデータもあり
それが子供たちの心の歪みに直結しているとも指摘されている。

その昔、船舶にコック長が存在した頃から、すでに30余年が過ぎ去っている。 
私がまだ船長時代に、小型貨物船クラスの乗組員推移は
12人⇒10人⇒8人⇒7人⇒6人⇒5人へと、船舶の近代化を進める方便は
間違った乗組員削減へと走ってしまった。 
6人の配乗は「船長・一航士・甲板長・コック長・機関長・一機士」の構成であったが
何故か最後の砦も外されて6人目のコック長までも、内航海運は削減させてしまった。
私はこの無謀な強行制度には実に驚いた。

これは近い将来において、大いなる船員不足を招く要因になっていくだろうし
この削減は乗組員の「絆」を失わせることから、海難事故は多発する無謀さを私は予測した。 
今は、まさにその的中した予測が、内航海運に津波のように
押し寄せていると語って過言ではない。 
どのように、安全教育を熱心に重ねてみても、安全を司るものは
所詮人間であり個々の心である。 
お互いが崩壊寸前の寂しい食生活の中に、会社が望むような真の連携や
思いやりを望むことは難しい。
 

人数を削減して会社だけが儲かれば良いと考えるのではなく
「乗組員」「家族」「船の安全」と利他の心を高めない限り
表面だけの安全教育などは自主性に乏しく、中心からの安全意識は育っては行き難い。
人員不足は人材不足を生み、海運界の再生は程遠くにある気がしてならない。
「 家族みんながそろって食事をする 」そのささやかな営みにこそ
本当の安全と健全な心が育まれ、安全運航の先に本来の運営利益に
授かるものではないだろうか。 
頻繁に起きる海難事故一回の喪失は、一名の人件費削減の何十倍に及ぶ損害を
国家も海運業界も真摯に学ばなければならない。

参考の為に「かしき」の語源とは・・・
昔、肥料の乏しい時代、自給肥料の一種として
山野で刈り取ったしば草を田畑に敷き肥料とした。 
そのものを〈かりしき〉といい、〈かっちき〉〈かしき〉ともいった。 
一旦刈り取って田植前に牛馬または人力で踏み込み、水田の元肥とするもので
現代では安価により良い肥料が開発されてからは次第に廃っていった。 
この(かりしき)と(かしき)の言葉が、船舶の乗組員の見習制度の語源として使われたと考えられる。 
いずれにしても、(かしき)は牛馬に踏まれる如し立派な肥料となり
豊年満作を生み出す人の修練として、有難い言葉だと思いたい。



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